西暦1000年。
京は鬼の怨霊攻撃により滅亡の危機に瀕していた。
怨霊の瘴気が大地を覆い尽くすのも時間の問題。
京の人々に明日は無い――
と思われたその時、
遠い時空から声が届いた。
神泉苑に大きな篝火が焚かれている。
その周囲には二歳から三十一歳までの男達が八人。
「ここに集まった皆様は、八葉に選ばれたのです」
まだあどけない女の子が、前に進み出た。
「だがお師匠からは、八葉とは神子に仕える者と聞いている。
肝心の神子はどこだ」
顔に白いまじないを施した八葉の一人が言った。
「それが……鬼に捕らえられ、
遠い時空に閉じこめられているようなのです。
けれど、さすが神子様。
私達に時空の彼方から呼びかけて下さいました。
これをご覧下さい」
篝火の炎の中に、一心に祈る少女の姿がぼんやりと映し出された。
「これが…神子殿」
「何と清らかな…」
少女は顔を上げ、口を開きかけた。
その時――
「何をしようと無駄なのだよ、八葉の諸君」
神子の姿をかき消して、
鬼の首領アクラムの顔がアップで映った。
「アクラム!」
「神子殿を解放してもらおうか」
「ほう? 神子は八葉のものだとでもいうのか?
だが、お望みとあれば返して…」
アクラムのアップにかぶって、
目の下に花のマークを入れた女性が現れた。
「あれ? 変な画像が出てきたぞ」
「アクラムが何を言っているのか、これでは聞こえません」
「くすくすくす…皆様お困りのようですわね」
「はい、横合いから割り込まれて困っております」
「今はアクラムと話しているのだが」
「まあ、そう邪険にするものではありませんことよ。
皆様は、『怨霊クリーナーD』をご存知かしら?
私、そ」
ブツン! と女性の姿が消え、再びアクラムが現れた。
「話の続きだ、八葉の諸君。
……もよい」
「『もよい』……とは何でしょうか」
「鬼の言うことなんか聞くことねえぜ」
「おばさんに中断される直前、鬼の首領は
『だが、お望みとあれば返して……』と言っていた。
おそらく、それに続くのが『もよい』だ」
アクラムは皮肉な笑みを浮かべた。
「私の言葉を解するのが精一杯という訳か。
八葉とは無能な者の集まりのようだな。
では、もう一度言うからよく聞くがいい。
京に向けて放つ最終兵器、迫力彗星に乗せて、
神子をお前達のもとに送り届けてやろう」
「はくりょく……すいせい?」
「白色彗星の間違いではないのかな」
「私が間違えるなどあり得ぬ。
迫力彗星が京に激突する前に神子を助け出し、
彗星を止めることができるかどうか…
八葉の手並み、楽しみに拝見しよう」
アクラムは傲岸な冷笑を浮かべて消えた。
こうして八葉は、神子を救い出し
京を滅びから守るために旅立つことになった。
で…ええと、何に乗ればいいのかな。
八葉だけに、「宇宙戦艦ヤハト」…とか?
なんちって。
続く
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2012.05.08 再掲