平泉紀行


観自在王院跡〜毛越寺〜源義経妻子の墓(金鶏山山麓)




2007年8月28日、平泉へと行って参りました。

中学生の頃から、行きたいと願っていた平泉。
奥州藤原三代(←泰衡さん、たいてい無視されてる…)と言われますが、
たった三代で滅びたみちのくの都、というだけではなく、黄金と浄土という
対極を体現した地ということで、なぜか強く心惹かれるものがありました。
ええ、もちろん学生時代には、このようなはっきりとした言葉で自分の思いを
捉えていたわけではありませんけれど(笑)、毛越寺浄土庭園は、憧れの場所。

そして長い長ぁぁぁい時を経て(苦笑)「十六夜記」です!
もはや、止めることはできません。

というわけで、平泉日帰り一人旅。



平泉は関東から遠いイメージがありますが、
新幹線と在来線の乗り継ぎさえうまくいけば、上野から片道約2時間半。
日帰りは十分可能です。
JR主催の「駅からウォーキング」というイベントでも、
年に何度か平泉のコースがあるくらいですし。

ですので最大のネックは、交通費。
最後にデータを付けますが、往復の運賃だけで、
真宮の家から鎌倉に、10回以上行かれます。
妄想と貯金通帳の残高の狭間で、胸がドキドキズキズキバクバク(爆)……。


上野駅8:02発東北新幹線はやて5号で、一ノ関駅に10:10着。
東北本線普通列車に乗り換えて10:21発、平泉駅10:28着。

生まれて初めて訪れる地には、やはり心が躍ります。
雨が上がったばかりでしたが、空が高く広く、涼やかな風が吹いていました。

平泉駅舎 駅前広場

御所車

↑平泉駅と、駅前広場です。
駅舎には、御所車。

「十六夜記」のマップでは、毛越寺から真っ直ぐ東のこの辺りが大社でしたね。


平泉の観光案内は、なかなかのもの、と改札口を出るなり思いました。
駅舎内に、配布用の列車時刻表はもちろんのこと、
歩くための地図、バスの時刻表なども用意されていますし、
駅を出てすぐ右手には、レンタサイクルのお店と観光情報案内所があります。
ここでも、目的別のマップが入手可能。

歩き用の地図は、観光ポイントだけでなく、
トイレの場所も書いてある親切仕様。
ガイドブックよりこちらの方が使い勝手がよかったくらいです。

スイーッと追い越していくレンタサイクルを横目に、
自転車と相性最悪な真宮は、他人様と自分の安全のため、徒歩を選択。

完治していない足が少々不安なので、バスのお世話になろうと思います。
平泉内の観光スポットを巡る「るんるん」という循環バスがあり(通年運行ではありません)、
その一日乗車券がなんと300円。利用しない手はありません。

けれど、30分間隔で運行のバス…次の発車が15分後とわかりました。

躊躇なく、歩き始めます。
15分あれば、毛越寺に着きますから。

……というわけで、バスの待ち時間惜しさに、結局一日中歩き通すことに……。
旅先では、ゆるゆる妄想しながら歩きまわるくせに、
乗り物の時間に関しては、短気の極みになってしまいます。


平泉駅から毛越寺への道 毛越寺までの道は、駅から真っ直ぐの1本道。
歩道が整備されていて、気持ちよく妄想しながら歩けます。

「銀…やっと来られたよ…」

他の歩行者がいないので、思いっきりユルんだ顔ができました。
ああ…神子冥利に尽きる時間です。

……アホとでも何とでも仰って下さい…(痛)。


毛越寺に隣接して、旧観自在王院庭園があります。
広々とした芝生と、その向こうに見える池。
雨に湿った砂地を、しゃくしゃくと池まで歩きました。
二代藤原基衡夫人建立と伝えられる観自在王院ですが、
今は金鶏山を望む平らかな地となっています。

旧観自在王院庭園  旧観自在王院庭園・池


そして、毛越寺…最初に書きましたが、「十六夜記」以前からずっと来たかった所です。

「十六夜記」で繰り返し語られる「浄土」という言葉。
銀も、泰衡も、己が行くことは叶わぬものと言います。
それは取りも直さず、浄土への憧憬の裏返しでもありましょう。

毛越寺山門  毛越寺庭園・池

とうとう浄土庭園に立ちました。
けれどどうしたわけか、浄土を模した景を目にしているというのに、
諸々の苦い事が浮かんでは消えていくばかり。
記憶の下層に沈殿していた澱が、この地に来たことで揺すられ、
浮き上がってきてしまったようです。
せっかく来ているのになぜこんな雑念が、と歯痒く思いながらも、
これもまた必要なことなのかもしれない、とも思います。

毛越寺庭園  毛越寺庭園・遣り水

上の写真右が、曲水(ごくすい)の宴の行われる遣り水です。
この写真の下手にある橋の周辺を、大勢の方達が清掃していました。
お話を伺ってみたかったけれど、お仕事の手を休ませるわけにはいきません。
広い庭園を一巡りして、来た道を戻りました。


平泉の道は道標が整備されているので、地図通りに歩いているのかな…
などと不安な気持ちにならずにすみます。
この時点で、バスはすっぱりあきらめていたので、
迷わず中尊寺に向かって坂を上り始めました。

観自在王院跡を左折。
最初に目指すのは、金鶏山麓の、源義経妻子の墓です。
中尊寺に向かう坂の途中、金鶏山への道標に従って左へ折れます。

ゲームマップでは、回復ポイントだったはずの金鶏山ですが、
山の入り口までの坂のキツいこと…(当比ですよ・笑)。
怨霊との戦闘もないのに、足をかばいながらの登坂はかなり消耗しました。

金鶏山は私有地で、写真右の千手堂が管理とのこと。


道標完備、感謝! 直進すれば中尊寺  千手堂・この写真の左側が、下の写真の鳥居


宗教的祭祀の場であったので、ハイキングコースの入り口には、鳥居。
そして鳥居をくぐってすぐ右手に、小さなお墓があります。
ささやかな石積みのお墓と、周囲の真新しい赤い柵の対比に、なぜか胸を突かれました。
黙して合掌。


金鶏山入り口  源義経妻子の墓


膝をガクガクさせながら急坂を下り、本通りに出るとすぐまた上り坂。
次は、清浄な気の巡る中尊寺です。



次へ


[平泉紀行・2] [平泉紀行・3] [平泉紀行・おまけの資料編]

[旅行記トップへ]