ちゃぷん……
「あ〜極楽極楽☆」
望美は湯船の中でのびのびと手足を伸ばした。
「湯加減はどう? 望美ちゃん」
ドアの向こうから、景時が尋ねた。
「ちょうどいいです。
それよりも、景時さん、すごいですね!
お風呂場をこんなにステキに改装するなんて」
「気に入ってくれた? 嬉しいなあ」
「まるで温泉に来たみたいです。
お家のお風呂に岩や緑があるって、いいですね。
何だか龍神温泉を思い出すような…」
「うわあ、そこに気づいてくれたんだ。
あの時は本当に気持ちよかったよね〜♪
だから、せっかく家にお風呂があるなら、って思ったんだよ」
「シャワーが打たせ湯になっていて、あ! 蛇口の形は鯉なんですね!」
「うんうん、細かい所まで見てくれてありがとうね♪」
「こんなにステキなお風呂、もっと早く見たかったな」
「ついこの間完成したばかりなんだ。
もちろん、君に見てもらうつもりだったけど、
やっぱりお風呂のよさは、入ってこそ分かるんだよね」
「あ…確かにそうかも」
「だからさ、池に落ちちゃうなんて望美ちゃんには災難だったけど、
その後に少しはいいこともあったって、思い直してくれるかな」
「……景時さん、ありがとう」
優しい思いやりの言葉に、望美は涙ぐんだ。
とたんに、ドアの向こうから、景時の焦る気配が伝わってくる。
望美の声が滲んだことに気がついたのだ。
「あ、ああ、洗濯乾燥機のらんぷが、終わりの所で点滅してる。
望美ちゃんが上がる頃には、きれいになった服が着られるようになってるはずだよ。
乾燥機付洗濯機って、こういう時に便利だね〜。買っておいてよかったよ」
「景時さんも池に落ちたのに、すみません」
「ああ、オレなら大丈夫だから気にしないで、
望美ちゃんは、ゆっくり入っててね。
オレ、お昼ごはんの支度してるから」
景時が行ってしまうと、風呂場はしん…と静かになった。
壁伝いに洗濯乾燥機の震動が伝わってくる。
――景時さんに抱えられて、いきなりお風呂って言われた時はびっくりしたけど、
こういうことだったんだ。
ちょっとだけだけど……私、とんでもないことを考えちゃった。
恥ずかしいな……それに、景時さんのこと、疑って悪かったな。
景時さん、私が疑ったこと、気づいていたんだろうか。
いつもより、おしゃべりだったし………。
そうだ!
望美は、高い窓から入ってくる光に向かって、にっこり笑った。
乾燥機が止まったらすぐに出て、景時さんにお風呂に入ってもらおう。
お昼ご飯は、私が作ればいいんだから。
↑のような、「師たる者」と同じシチュエーションで、
景時さん(27歳の若者・地白虎)ならどうするか?
「このどあの向こうに望美ちゃんが……」
等々、考えてるんだろうなあ。
でも能力値は高いのにそれ以上は踏み込めない――
というのが、自分にはツボであります(笑)。
……と言いつつ……別のエンドも書いてしまいましたが。
2012.08.11 筆