問題の多い料理店 ・ 取材編
「小ネタ」に掲載の「問題の多い料理店」の続きです。

※ これは、「男の美食と美学」の記者ロシナンテの
取材用レコーダーに残されていた記録である。理由は不明だが、ここには
ロシナンテ以外のつぶやき声までも録音されている。
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「レストラン・シュバリエのオーナー、リシュリューである。男の美学について語ればよいのだな」
「(いきなり取材の趣旨を勘違いしてるよ、この人。)
オーナー、ロシナンテさんは、この店の取材に来たんですよ」
「そそそそうなんです。ありがとうございます、トレヴィルさん」
「いいえ、どういたしまして(いつものことだしね。)」
「ええと…まずは、こちらのレストランのコンセプトについてうかがいます」
「そのようなことは語るまでもあるまい。一流の腕を持つ者たちを集めたというだけのことだ」
「ええと……スタッフはオーナーがご自身で選ばれたのでしょうか」
「貴様、リシュリュー様のお答えが不服だとでもいうのか」
(わわっ! 黒服の人にいきなり威嚇されました。)
「いいいいいえ、不服とかではなく……ただ、一流の方たちをどのように集めたのかと……つつつまり
選ぶに当たって、何を重要視したのかとか…取材……
ですので」
「ロシュフォールさん、ロシナンテさんがおびえていますよ」
「リシュリュー様が貴重な時間を割いて下さっているというのに、
こいつがくだらぬ質問などするからだ」
「ロシナンテさん、まだ紹介していませんでしたが、この無礼な仏頂面はソムリエのロシュフォールです。
気にしないで下さいよ、この人、いつもこんな調子なんで」
「よよよよろしく〜。ロシナンテです」
「一度言えば分かる」
「すすすすみません〜。では、話題を変えます」
(あっさり引き下がっていいのかなあ。肝心な質問だと思うんだけど。
まあ、ロシュフォールに睨まれたら仕方ないよね。)
「ええと…トレヴィルさん」
「(ああ、目がうるうるしてるよ。ちょっと同情しちゃうな。)はい、何なりと」
「あああありがとうございます〜〜。
トレヴィルさんは、どういう経緯で、マネージャーをしながらインテリアデザインも担当することになったんですか」
「私は元々芸術が専門なんですよ。
だから、インテリア担当兼マネージャーと言った方が近いかもしれませんね」
「フン…無理して兼任した結果、どっちつかずになっているという自覚がないようだな」
「そうですか? 私はどちらもきっちりこなしていると思っていますが」
「こなす? 貴様にとって仕事はこなすだけのものだというのか」
「ふうん? じゃあロシュフォールさんは仕事をマジメにこなしていないと?」
「トレヴィル、貴様はリシュリュー様から任された尊い仕事をどのように考えている」
「仕事は仕事ですよ」
(けけけ険悪です〜。おろおろおろおろおろ……)
「ははは、何を驚いている。これぞレストラン・シュバリエの美学だ」
「は…?」
「言わねばわからぬか? 我々の仕事に妥協はないということだ」
「は……はぁ…」
「さすがリシュリュー様です」
「(わかった風にまとめてるけど、いちいち感心する人がいるから質が悪いよね)」
「ところで、撮影班はどこか」
「は?」
「オーナーの写真抜きでは特集にならぬであろう? 私は
正面のアップもよいが、斜め右から撮ってもなかなかだぞ。
執務中のショットは不可欠であるな。建物を背景にした撮影は、
特別に引き立つ場所を指定してやってもよい」
「オーナー、スケジュールの関係で、店の撮影は後日にセッティングしてあります」
「そうか。その時には、夕暮れの窓に向かう横顔も撮ることを許可する」
「畏まりました。すばらしい写真になることと存じます」
「私だけ目立っても仕方ないのだがな」
「いいえ、リシュリュー様がいらしてこそのレストラン・シュバリエです」
(○#▼!×〜△〜□◆…@@@……)
「(あ〜あ、かわいそうに、ロシナンテさん容量オーバーしちゃったよ。)」
「ロバナンテ記者、よい記事が書けそうだな。
この後はバー部門の取材と聞いているが…」
「(おまけにロバにされちゃうなんて、まあ、相手が悪かったよね。)」
「ロシュフォール、バーテンダーの紹介はお前に任せよう」
「私がこの者を……? ………畏まりました。ついて来い、ロシナンテ」
「(ひいいいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!)」
ガーガーガーピ〜〜〜〜〜〜ガツン!! ゴツン!!
ギュロロロロrrrr ザーザーザーザー…………
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※ 録音はここで途切れている。なお、ロシナンテ記者は現在入院中である

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