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収録タイトル 1. 追儺の日 2. 逃避の日 3. 静寂の日 4. 約束の日 5. 雨の日 6. 煩悩の日(サイト掲載の「妄想の日」と同じ出だし→全く違う展開の話) オマケ: 恥じらいの日 逃避の日 「先生! どこですか?」 望美の声がする。 「先生、…なぜ姿を見せてくれないんですか?!」 望美の声に、焦燥感が滲む。 「先生……また…いなくなってしまったの…?」 途切れがちに続く言葉。 望美は今にも泣き出しそうな顔をしているに違いない。 ――案ずるな…。 すぐにでもそばに行き、頭を撫でて安心させたい。 だが…すまぬ、神子…。今、出て行くことはできないのだ。 私の様子を見たなら、お前が傷つく。 「先生! 先生〜〜〜!! 黙って消えたりしないって、約束したじゃないですか!!」 がたがたと音がする。 あきらめきれない望美は、家中の部屋を片端から見てまわっているようだ。 ――無論、お前との約束は命を賭して守る。 私はもう二度と、お前の側を離れないと誓った。 決して黙って消えたりはしない。 しかし、今だけは…頼む、神子。私を探さないでほしい。 望美が近づいたところで、瞬間移動して別の部屋に逃げる。 しかし、常ならば造作もないようなことが、 今のリズヴァーンには、体力を根こそぎ削り取られる苦行に等しい。 ・ ・ ・ 雨の日 「雨の日は…いや」 望美がぽつんと言った。 リズヴァーンは少し驚いて、隣の桜色の傘を見下ろす。 だが望美の顔は、傘に隠れて見えない。 今日の雨は、しとしとと静かに降りしきる初夏の雨。 野分や雷雨のような激しい雨脚ではない。 それなのになぜ、いやなのだろう。 望美の声には、悲しい色さえ混じっている。 「すまぬ、神子。神子が雨を嫌っているとは知らなかった。 でえとは別の日にしよう」 すると桜色の傘がぱっと斜めになった。 現れた望美は、慌てた様子でぶんぶんと首を振っている。 「ちっ違うんです、先生!」 「違う? どこが違ったのだろうか」 困惑しながら問い返すと、桜色の帳がリズヴァーンの眼から再び望美の顔を隠した。 ・ ・ ・ |