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先生は私を助けるため、繰り返し時空を過去へと渡ってくれた。 私を置いて、たった数か月先の時間すら、進むことができずに。 私の死を受け入れることを、拒み続けて…。 「少しだけ先の時間を…先生は見たいと思わなかったんですか。 新しい日が始まれば、先生を違う運命が待っていたかもしれないのに」 リズヴァーンは、驚いたように眼を開き、次いでゆっくりとかぶりを振った。 「お前を置いていくことなど、できるはずもない。 いや、そのような考えさえ、思い浮かばなかった」 人は…未来へと進むもの。 なのに先生はただ一人、傷ついた心を抱えたまま… 未来に背を向けて、幾度も…過去へ…。 「神子…今でも私はふと、長い夢を見ているのではないかと思う時があるのだ。 お前に触れたなら消えてしまうような……儚く、幸福な夢を…」 望美の胸が、ズキン!と痛んだ。 リズヴァーンの抱える、痛々しくも深い傷を思う。 先生は…恐れていたの…? あまりに繰り返し傷ついたから? だから、私に… 触れようとしなかったの? 倶利伽羅を目指し、幾日も二人で旅をして、 その間、険しい道で私に手を貸すことはあっても、 決してそれ以上、近づくことはなかった。 先生…私は夢なんかじゃない…。 消えたりしない。 これからだって、何があっても、私は…先生と一緒に…生きていく。 望美は、決意した。 私も、乗り越えなくてはいけない。 自分の中の恐れを…。 |