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「すまないが、私には異国の言葉は理解できぬ」 そう答えながらも、「きゃまくら捨て石四」が鎌倉駅らしい…ということだけは、 これまでの経験上、類推できた。 しかし、推量だけで答えたなら、誤った道を教えてしまうかもしれない。 彼女が抱えている観光案内本を指さし、身振りで、目的地を示すように伝える。 「◆□◎凵vそう言って彼女は地図の一カ所を指で押さえた。 そこはやはり、鎌倉駅。幸い、すぐ近くだ。 「この道を真っ直ぐ行けばよい」 腕を伸ばし、そちらの方向を指す。 しかし、女性はくねっと身体を揺らすと、「◎○●〜〜〜」と言うなり、 リズヴァーンの腕を取ってそちらの方に歩き始めた。 案内せよ、ということなのだろう。よほど不安なのか。 むかっ!! 「…で、一緒に行ったんですか」 「幸い、急ぎの用事はなかったので、駅前まで同行したのだが、 私のとった行動は、何かこの世界の則に反するものだったのだろうか」 「い、いいえ…そういうわけじゃ…」 |
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その後、リズ先生は大事そうにちょこれえとの箱をしまうと、庭に出て剣の素振りを始めた。 家中をきれいに掃除し、何かを長々と紙にしたため、夕食をとることもなく早々に床に就いた。 そして翌朝には、リズ先生は夜明け前に起き出し、朝の稽古を終えると どこかに出かけていってしまった。 乱れに乱れた気を落ち着けようと、涙ぐましい努力をしているのが分かる。 帰って来るなり、リズ先生はあのちょこれえとの箱を開けた。 素早く部屋から逃げ出した私は、縁側から首だけ伸ばして様子を窺う。 その時私の眼に、信じられない光景が飛び込んできた。 リズ先生は手を合わせ黙礼すると、ちょこれえとを口に入れたのだ。 「ぐふっ…」 リズ先生はその場に倒れた。 「みぎゃっ!(大丈夫か?)」 声をかけるが、リズ先生から返事はない |