「待ちなさいっ!!」
望美は庭に飛び出した。
お魚をくわえたどら猫を追いかけるときの作法を守って、もちろん裸足だ。
「このまま逃げるなんて許さないっ!」
「ぅぁ〜ぅ?」
どら猫は魚をくわえたまま、喉の奥で鳴きながら振り返る。
「隙ありっ!」
しかし、あと僅かという所で、どら猫は望美の手をかわした。
「ぅぁ〜〜ぉぉぅ」
そして、目を三日月型に細めて、逃げようともせずに望美を見る。
「今度こそっっっ!! あ…!」
どら猫に飛びついた望美は、バランスを崩して大きくよろけた。
池の縁に並べた石の上に乗ってしまったのだ。
「望美ちゃん、危ない!!」
景時が家の中からぴょんぴょんとジャンプして池の前まで来た。
――が、一足遅かった。
足を滑らせた望美と勢い余った景時は、ジャボン!!!
と大きな音をさせて、揃って池に落ちてしまった。
鯉とサンショウウオが、慌てて隅に避難する。
「なぁ〜〜ご♪」
塀の上から、どら猫の勝ち誇った鳴き声が聞こえた。
「あきらめないっ!!」
「景時さん、ごめんなさい…」
2012.08.11 筆