果て遠き道

間章 散桜

あとがき 〜様々な捏造のこと〜



この間章は、1年以上に渡って暖め続けてきたシーンの連続で、本当に書きたくてたまらなかったものです。

ただ、抱えていた時間が長過ぎて、自分の中にイメージが細部までできあがってしまったことと、
強い思い入れのために、書くべき部分と省略すべき部分のバランス感覚が、
他の章とは微妙にずれていることを、否応もなく自覚せざるを得ません。

またこの章は、お読みになってお分かりの通り、夢と現の端境のような話です。
従って、細かい描写を書き連ねていく類のものではないので、書き込みのない分、
なおさら、わかりづらくしているのでは、との懸念がつきまといます。
なので、ヤボな行為ではありますが、捏造部分を含め、以下に補足・解説させて下さい。


捏造その1
花断ちを会得したのは、リズヴァーンが先か、望美が先か・・・。
幼い時に望美の剣を見たリズヴァーンが花断ちを修得し、
長じてその技を望美に教え、今度は望美が鬼の里で・・・というわけで
「遙か3」のガイドでは、どちらとも答えの出ないものとしていますが、
これに真っ向から逆らって、リズの父にご登場頂きました。

捏造その2
父上は「流離」にも顔を出していましたが、勝手に里の棟梁ということにさせて頂いてます。
この章の中では、花断ちは特に名づけられている風ではなく、「鬼の秘剣」(笑)として、
棟梁の家系に伝えられているのでは、と、ぼんやりにおわせたりなんかしてます。

捏造その3
母親ですが、美しく儚げなイメージを最初に考えてしまって、その通りに突っ走りましたので、
大家族のお母さんという感じではないです。
棟梁である夫にベタ惚れな様子で、「あなた」とか「棟梁様」ではなく「お館様」と呼ぶのがしっくりくるかと。
お館様なので、あえて父は直毛(爆)。リズヴァーンのウェーヴのかかった髪は母似ということで。

捏造その4
初対面の子に、いきなり「お父さん」と呼びかけられても動じない父は、
道徳堅固な方で、きっと身に覚えが全くないのでしょう・・・・げほげほ・・・。
長老が棟梁の子に名前を与えるというのも、話に合わせてでっち上げた鬼の里のしきたりです。
例になく早い時期に、長老から子供の名前を授けられた父。
その帰りに、授けられたばかりの名、リズヴァーンを名乗る鬼の一族の子供に会い、「お父さん」と呼ばれます。
一瞬走った動揺は、「父」の部分にではなく、「リズヴァーン」という名前への驚きであったかと。

過去に飛ばされたリズが、幼いわりにしっかりしていて、その時すでに、父から厳しく武術を仕込まれ、
長老からもいろいろと学んでいたというのは、我が子の置かれた宿命を、うすうす感じ取っていた父の
精一杯の計らいだったのではないか、などということも、捏造基本設定(苦笑)。

幼い子供が一人で生きるというのは、それだけでも想像を絶するものがあります。
30年という歳月に立ち向かい、まして鬼という、社会の中で忌み嫌われる存在であるにもかかわらず、
リズヴァーンは一人で生き抜き、それだけではなく、悪にも手を染めず、剣の道を究め、
独学で様々な教養を身につけました。

変なところでリアリスト、と思われるかもしれませんが、これを可能にするためには、
そこに何らかの生き延びる手だてが、あってしかるべきではないかと思うのです。
白龍の逆鱗が、運命が、あるいは時空が、将来の八葉たることを幼子に強制したからには、
それなりの助力がなされてしかるべきでは、と。

その結果として生まれた妄想が、リズヴァーンの意志によらない、数度にわたっての逆鱗による時空移動であり、
リズヴァーンが時空移動して来る日に、長老が早々と棟梁の子の名を与えたということであり、
それによって、父が我が子の背負う宿命を知ることになったということであり、
泰継が次に来たるべき地の玄武のために草庵に結界を施し、
住む場所と独学の手段を用意していた・・・・etc.というものです。


もう一つ、ここで鬼であることを、もう一度捉え直したいという思いもありました。
成長したリズヴァーンが父と再会することで、幼い頃には知るよしもなかった、
父の深く強い思いを受け止める機会を作りたかったのです。

鬼であることのネガティブな面を強調していくのはドラマティックではありますが、
それは京の人間の側から見たものであり、鬼というのは元来誇り高い一族であったはず。
父との出会いを通して、リズヴァーンは、その「誇り」の部分をしっかりと受け止めたのではないかと思います。
ついでに、あの立派な装束とシャムシールのような特殊な剣は、なかなか手に入らないだろうし(爆)。

この時点でリズがお腹にいるとすると、生まれ月は1月なので、この話の桜の季節にぎりぎり・・・かも。
などと、つまらん計算に血道をあげたりしたのは、ご愛敬ということにして下さい。
そういえば、この間章での時空には、3人のリズが存在することに。頭が混乱します(笑)。


などなど、先生至上!の妄想は限りなく、きわめてマヌケっぽい告白を連ねたような気がしないでもありません。
次章「炎呪」も、リズヴァーンのひいきの引き倒し状態で話が進んでいくと思いますが、
おバカなやつ、と大目に見つつ、引き続きおつきあい頂ければ幸いです。




間章 散桜 

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第4章 炎呪 

(1)

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